まっしろライター

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「メラン・コリー」1巻(西瓜割)

メラン・コリー (1) (まんがタイムKRコミックス)

メラン・コリー (1) (まんがタイムKRコミックス)

言わずと知れた美術4コマの金字塔「GA -芸術科アートデザインクラス-」。そのGAに同じく、連載時のカラーページがそのまま収録されている豪華仕様の「夜森の国のソラニ」。百合漫画界のホープ桜Trick」、表紙イラストの美麗さに思わず息を呑む「√中学生」。8月末に発売されたKRコミックスのそうそうたる顔ぶれの影に隠れてしまった感のある当作品。ただ、どんな作品なのか想像できないという点で、ある意味一番楽しみにしていた作品でもある。

4コマを大雑把に分類すると、昔ながらの「ギャグを優先した4コマ」と、いわゆるストーリー4コマや萌え4コマと呼ばれる「ストーリー性やキャラの可愛さを優先した4コマ」の2種類に分けられる。当作品は前者の要素が強く、終始ハイテンションなボケとツッコミが繰り広げられるものの、残念ながらそれらのギャグは全体的にスベッている。そもそも、「スイカから関西弁を喋る人間が生えてくる」という設定の時点でかなりスベッている。

ギャグがスベッているギャグ4コマなんて…と思いきや、これが意外にも面白い。主人公であるスイカ少女のメラン・コリー(メラちゃん)は、面倒くさがり、構ってちゃん、器が小さい、自信過剰と、お世辞にも性格が良いとは言えない。見た目こそ美少女だが、それ以上に頭のスイカが目立ちすぎるせいで、学校のクラスメイトや道行く人にも「何アレ(笑)」「スイカ(笑)」と失笑を受けている。
そうしたメラちゃんの空回りっぷりと、ギャグのスベリっぷりが奇跡的にシンクロしており、読んでいるこちらも(良い意味で)失笑してしまう。一部のお笑い芸人が得意にしている「スベリ芸」に倣って、当作品は「スベリ4コマ」と呼ぶのが正しいのかも知れない。

もちろんこの手の芸風(?)は、一歩間違えば「単にスベッているだけ」になってしまう諸刃の剣。「もっと自由に、4コマを。」をキャッチフレーズにしているまんがタイムきららミラクでなければ、単行本はおろか連載すら難しかったのではと思う。この先、勢いを失って本当に「単にスベッているだけ」になってしまったとしても、「笑える」「萌える」「ストーリーに惹き込まれる」以外の4コマの楽しみ方を教えてくれた当作品を、私は忘れないだろう。