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「ロコ・モーション」1巻(藤井理乃)

ロコ・モーション (1) (まんがタイムコミックス)

ロコ・モーション (1) (まんがタイムコミックス)

ローカル線の新米車掌・ロコが奮闘する、鉄道ネタ満載のほのぼの4コマ。…という感じの作品だと、読む前までは思っていた。単なる鉄道雑学に留まらず、「みそララ」や「ラッキー・ブレイク」等の所謂「お仕事4コマ」としてもかなり上質な作品に仕上がっている。

高校時代、将来について何も考えていなかったロコが、親友のモコの助力で彼女と同じ鉄道の道を志すまでを描いたプロローグ的な最初の3話。実際にロコが入社し、研修期間を経て、車掌の仕事とはどういうものかを綿密に描写している序盤から中盤。仕事でミスをして落ち込み、挽回するために頑張りすぎて過労で倒れる悪循環に陥るが、モコの叱咤と励ましによってロコが精神的に一回り成長する終盤。単行本になったときのことを考えて描いていたかのように、1冊の本として非常によくまとまっている。不吉な話、もし続刊が出なくてもそこまで残念じゃない。

この作品に厚みを持たせているのは、ロコの親友であるモコの存在ではないだろうか。ロコが高校で1年留年しているため(その留年した理由がなかなか衝撃的で、これはただの鉄道ネタ4コマじゃないな…と考えを改めるきっかけになった)、モコは1年早く入社している。その1年についてはほとんど語られていないが、「鉄道が好き」という気持ちだけで務まる仕事じゃないのは想像に難くない。それでも諦めずにやってこれたのは、ロコが自分を追いかけてきてくれたからだという。ロコにとってモコが恩人であるように、モコにとってもロコは恩人なのだ。

その1年のブランクによって生じる2人の距離感。もちろん2人は親友だが、職場では紛れもなく先輩後輩である。ようやく同じ車掌という立場になったものの、初めての乗務で遠足気分が抜けないロコにモコは苛立ちを隠せない。すぐにでも埋めたいのになかなか埋まらない経験の差、その辺り描き方は本当に上手いと思った。