「光の大社員」5巻(OYSTER)
- 作者: OYSTER
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/11/12
- メディア: コミック
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ギャグ4コマでも1話の中ではストーリーのある作品が増えているが、この作品はほぼ完全に1本のネタがそれぞれ独立している。1本目は輝戸光の大社員になるぞ宣言、2本目は宮代開発部主任のおもちゃ紹介、最後は伊達勲の一人暮らしあるある、等々。先月号の話を読んでいる必要はないし、各ネタが登場人物の紹介も兼ねているので、この作品を知らない人でも今月号の「まんがタウン」を読むだけで楽しめる。その辺りが、最近の4コマにあまり好意的でない人にもこの作品が受け入れられていた要因なのだろう。
今巻で特に印象に残ったネタは2つ。まず、新キャラの怪人サトリ。人の心が読める能力を活かしてアルクメンの弱点を探そうとするが、アルクメンがどうでもいいことを考えているせいで大抵うまくいかない。後半はネタの内容が変わってきて、人の心が読めることによる彼自身の苦悩が描かれるようになる。「人の心が読めても空気が読めなくちゃな」と酒の席で石原副部長に絡まれて萎縮するサトリは、ギャグとしては笑えるが、自分自身の姿と重ね合わせると素直に笑えない。また、サトリの登場以降、アルクメンのキャラが立ってきたように思う。正直、単独で出ていた頃のアルクメンは少しスベリ気味だった気がするので。新キャラによって既存キャラに新たな魅力が加わるという関係性は、忍者係長と忍者OLすずなのそれに近い。
そして、もう1つがその忍者係長とすずな。これまでも「そういう」雰囲気を匂わせることはあったが、すずなが忍者係長を好きだということが遂に明言され、そこからアプローチ→告白→結婚まで一気に突き進んだ。とはいえ、忍者係長とすずなのネタは1話につき多くても1ページしか割り当てられていないため、すずなが告白してから忍者係長が承諾するまでに3話(3ヶ月)もかかっていたりする。だがそれがいい。色物キャラとして登場しながら、女としての魅力を磨いてとうとうゴールインしたすずな。連載当初はヒロインポジションで、輝戸や伊達に好かれている描写も少なからずあったのに、いつの頃からか飼い猫とのコンビでしか登場しなくなったたまき。どうして差がついたのか…。
萌えを狙っていないのがこの作品の魅力と評されることも多いが、個人的にはこの作品を萌え4コマとしても読んでいた。というより、OYSTER作品の最大の魅力はギャグが面白いことでも、テンションが高いことでも、台詞の選び方が巧みなことでもなく、女の子が可愛いことだと思っている。布で隠していた素顔を見せたり、居酒屋でサトリに絡んだりと、完全に正ヒロインの座を獲得したすずな。社長に騙されて、何もいない水槽を覗き込んで魚を探すちはる。後輩のすずなが先に結婚して焦ったのか、自分は輝戸と2歳しか違わないと必死にアピールするたまき。この作品の女性キャラは実質この3人で(あとはすずなの同僚くらい)、「男爵校長」や「超可動ガール1/6」に比べると人数も出番も少ないが、その分1人1人に可愛さが凝縮されている。最高のギャグ4コマにして最高の萌え4コマ、それが「光の大社員」。お疲れ様でした。