「▲コンプレックス」2巻(鴨鳴アヒル)
- 作者: 鴨鳴アヒル
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2014/02/27
- メディア: コミック
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きらら系列の雑誌には現在、百合を題材にした作品が多く収録されている。仲の良い友達の域を超えないものから、キスやそれ以上の行為をするものまで様々だが、当作品はある意味、きららの歴史上で最高の百合4コマだったかも知れない。ファンの間で冗談気味に「夫婦」と呼ばれる女性キャラのコンビは数あれど、家族にも公認されて本当に夫婦になったのは、私の知る限りでは円と鋼音しかいない。それも、連載当初から百合夫婦だったという唐突な設定でなく、一人の友達が欠け替えのない最愛の相手に変わっていく過程を丁寧に描いた上での結末なので、説得力がある。
円と鋼音が夫婦になったこと以上に驚きだったのは、二人が選んだ進路だった。同性愛の夫婦という少数派である以上、友人や家族以外の人にはその関係を隠そうとするはず。にも関わらず、二十歳になった円と鋼音は、自分たちが暮らしているアパートを学生寮として開放する。事実、寮の学生には二人が夫婦であることを隠しているが、別にバレても構わないと考えているように見える。もはや、誰かにバレたり茶化されたりしても、彼女たちの愛は揺らがないという証明なのだろう。同性愛のカップルは子供を作れないから非生産的と批判されることもあるが、しかし円と鋼音は自分たちの家で子供を育てている。フィクションだからとごまかさず、百合漫画が抱える問題にこの作品は正面から向き合い、完璧ではないにせよ一つの答えを提示したと言っても過言ではない。
最後に、鋼太の存在にも触れておきたい。百合漫画において、ヒロインの許嫁の男キャラ。マリみての柏木を彷彿とさせる典型的なかませ犬ポジションだが、1巻の中盤で鋼太とひのりに恋愛フラグが立ってから、この作品は格段に面白くなった。円と鋼音がメインになるのは当然としても、ひのりと凛子は連載当初あまり目立っていなかっただけに、鋼音ともひのりとも関わりの深い鋼太は当作品の重要な潤滑油だったと思う。鋼太とひのりという「普通の」男女カップルが近くにいることで、円と鋼音の「普通じゃない」関係が強調され、その関係を貫こうとする二人の意志の強さが伝わってくる。作品のタイトル「▲コンプレックス」の一辺を占める鋼太の功績は大きい。ひのりと末永く爆発しろ。